
日本 1-2 ブラジル。先制しながら、ロスタイムに逆転を許した。
試合後、「ブラジル相手にあと一歩だった」という声をよく見た。
先制して、最後まで競って、最後の最後に沈んだ。気持ちはわかる。
でも、私の目には違って映った。
あと一歩では、なかったと思う。
後半は、あと一歩どころか、ただ押し込まれた45分だった。
跳ね返しても、また来られる。
ひっくり返す場面は、ほとんど無かった。
スコアは惜しいが、中身は惜しくない。これが、私の総括。
ただ、悲観しているわけではない。
むしろこの試合は、日本がどこへ進むべきかを、はっきり見せてくれた、世界に通用する状態とはどういうことかを示してくれた試合だった。
前半は100点。

前半の45分は、文句なしだった。
私だけでなく、プロの多くも「前半は良かった」と言っている。
良かった中身は、はっきりしている。
前線から人が出て、ブラジルにミスをさせる。
奪ったら、まっすぐゴールへ向かう。
ヴィニシウスには、一人で対応せず、複数で囲んで何もさせない。
個では敵わなくても、全員でやれば止められる。
この景色は、初めてではない。
カタールW杯後のドイツとの再戦。
あの90分は、ずっと日本が圧力をかけ続けて勝ち切った。
イングランド戦も近いものがあった。
後半、ブラジルはやり方を変えてきた

問題は後半だ。
さすが百戦錬磨のアンチェロッティ監督。
ブラジルは保持をやめ、シンプルに前へ当ててきた。
崩しにこだわらず、力で押し込む方向に切り替えた。
失点も、その流れだった。
フリーになったマガリャンイスが上げ、ヘディングの強いカゼミロが、見慣れた形で決める。
崩しも何もない、ただの力勝負。

ここから日本は、悪い方へ転がる。
このシンプルな攻撃が怖くなり、サイドからのクロスを警戒し
守備ラインが前半より数メートル下がった。
たったそれだけ。
でも、この数メートルが命取りとなった
跳ね返した後のボールを拾う位置が、それだけ後ろになる。
すると、そこから出すカウンターが届かない。
前半はゴールが近かったのに、後半は遠い。
ブラジルからすれば、刺し返される怖さが減る。
だから、4-3-3は途中から4-2-4になっていた。
そして、カゼミロが最前線まで上がってヘディングを決めたのも、この「下がり」が原因だと思う。
前半のように前から行けていれば、
そもそも彼があの位置にいなかったかもしれない。
タラレバに意味はないが、攻撃の脅威を与えれば、ボランチは簡単に上がるわけにはいかない。
失点は、力で殴られたというより、引いてしまった結果だ。
実力差のある相手に45分も押し込まれれば、どこかで穴は空く。
よくある話だ。
そして残念ながら、その流れを断ち切る力は、日本には残っていなかった。
覆せなかったのは、地力と層の差

今回は、主力が軒並みいなかった。
三笘、南野、遠藤、板倉、久保…
彼らが揃っていれば、後半も同じ圧力でいけたんじゃないか。
その思いが、どうしても消えない。
正直どれだけ強豪国であって、スタメン選手5人が出れない状態で
勝つのは相当至難の技であり、この状態でブラジルと接戦した選手たちを心底尊敬しているし、感動している。
ただ後半追いつかれたタイミングで、
スピードやパワーで局面を一発でこじ開ける選手がいなかった。
途中から入った町野、菅原、鈴木が悪いわけじゃない。
ただ、彼らは一発で違いを作るより、守備時の貢献度で入ったメンバー。
そして、ラインが低い状況では、防戦一方になる。
おまけに、前田大然、伊東純也、中村敬斗、堂安は、前半からずっと走っている。
終盤に押し返す脚は、もう残っていなかった。
個の差と、控えの差。
この試合は、それがそのまま出た。
「あと一歩」ではなく、地力で押し切られた。
改善点は明確。前半の45分を、90分にできるか

負けたあと、SNSではいろんな声が飛ぶ。
「個の力を上げるしかない」
「育成を変えるしかない」
どれも正しいのかもしれないが、漠然としすぎていて、私はあまり乗れない。
前半が100点なのは、もう分かっている。
だったら、問いはひとつでいい。
「あの前半を、90分続けるには、どうするか。」
これに絞れば、話はずっと分かりやすくなる。
その視点で今回の課題をひとつ挙げるなら、後半に「守ろう」という意思を強めすぎたことだ。
両ワイドを抑え、サイドバックからの球も警戒して、中盤のラインが押し下げられた。
前から行けないからプレスがハマらない。
ハマらないからブラジルはミスをしなくなる。
ミスが減れば、楽にボールを回される。
そうしてヴィニシウスにボールが入り、後半から出たマルティネリが仕掛けてくる。
守りに入った瞬間から、この悪循環が始まっていた。
「守り切る」のではなく、「勝つために守る」
ここで思い出すのが、強きイタリアだ。
イタリアは守備の国と言われてきた。
でも彼らは、決して引いて守り切るチームではない。
点を取るため、勝つために守っているだけだ。
だから、彼らのラインは下がらない。
守る時間は長くても、ラインはむしろ前へ出ていく。
圧力を上げて、上げて、「何をやっても跳ね返される、もう手がない」と相手に思わせる。
その瞬間に誰かが刈り取り、一気にカウンターが発動する。
日本の後半は、これの逆だった。
「いったん守り切って、それから取りに行く」。
だからラインが下がる。
目指すべきは「勝つために守る」だ。
守備に比重を置いても、ラインは下げない。
むしろ圧力を強める。
守って、守って、相手が苦し紛れになったところを刈り取って、そこから刺す。
同じ「守備的」でも、向きが正反対だ。
ただ、ブラジル相手にそれをやることは至難であることも理解している。
でもそれでも1点取られる事を警戒するのではなく、1点取って差をつけるにはどうすべきかの「守備」を考えることが重要なのではと思う。
前回のクロアチア、ベルギーともに、圧力をかけるのではなく「守り切る」姿勢が強く、
一方で、強豪国は勝ちに行く
勝つための前傾姿勢の守備を徹底する事が重要だったんじゃないかと私は思う。
前線から刈る。これが日本の良い形だと思う

今大会、明らかに異次元のパフォーマンスを魅せた前田大然。
彼のパフォーマンスが日本スタイルと言っても過言ではないと思っている。
世界の3トップと言えば、ふつうはエース級の点取り屋を配置する。
日本は、昔からこういたクラッキを置くようなチームではない。
前田大然や伊東純也がいて、昔で言えば岡崎慎司がいた。
前線からしつこく守備をして、相手にミスをさせて、そこを奪う。
これこそ日本の良さなんじゃないか、と私は思っている。
ブラジル戦の前半しかり、ドイツ戦も、まさにそれがハマった時間だった。

その鍵は、前線のスピードだ。
足の速い選手が最前線から走り続けると、相手のセンターバックは落ち着いて持てなくなる。
そのミスを、後ろの全員で拾う。
だから私は、前線には連携型や一発型より、走れるスピードのある選手を置きたい。
日本のサッカーは、ミドルブロック×ミドルカウンター

日本が目指す形は、引いて引いて守り切って、ロングボール一本で、足が速くて体も強いヴィニシウスみたいな怪物が一人で完結する——そういうサッカーではない。
それは圧倒的なフィジカルを持つ国がやるもので、日本のものではない。
私のイメージは、もう少し前だ。
中盤のゾーンで構える。
ラインは、ほんの少し高めに保つ。
そして相手がミスをした瞬間、その高さを使って、全員でドッと前に出る。
奪った一人が独走するんじゃない。
周りから次々と人が流れ込んでくる。
守備時でも同じで、ヴィニシウス対応が分かりやすかった。
彼がボールを持った瞬間、日本の包囲網を作っていれば、
世界最高のドリブラーでも一人になる。
寄せられて、潰されて、奪われる。
奪った時には、もうこっちの攻撃が始まっている。
極端な話、ボール保持率は1対9でいい。
持たせて、ミスをさせて、奪う。
日本がボールを持つのは、奪ったその一瞬だけ。
素早く繋いで、素早く仕留めて、相手がやり直したら、また奪いに行く。
もっと言えば——GKを除く10人のうち、9人が遠藤航や佐野海舟のような回収役で、最後の10番だけが、その重く黒い試合を、一人で美しく仕留める。そんなチームでも良いと思っているくらい。
日本の理想を例えるなら「ハイエナ」

ブラジルやフランスは、ライオン。
一人ひとりが大きく、強く、個で完結する。
一方の日本は、
骨格的に、そのようなフィジカルに頼った戦い方はできない。
だからこそ、小さくとも群れでライオンを圧倒する戦い方をする。
ハイエナは、一匹なら小さい。
でも群れれば、ライオンもチーターも退かせる。
冷酷に、90分、相手に何もさせない。
じりじり追い詰めて、ひたすら相手のミスを誘って、群れで仕留める。
日本に一番似合うのは、この戦い方だと思う。
ハイエナというと暗いイメージがあると思うが
「体格は大きくなくとも群れで大物を狩る」
という、動物界でも畏怖される存在。
ふと思うのです。

日本が世界に誇る最高のコンテンツ漫画/アニメが世界で愛される一番の理由は、
主人公が必ず一度、闇に堕ちるすることだと思うのです。
ワンピースも、ハンターハンターも、進撃の巨人も、ヒロアカも。
温厚で純朴な主人公が、挫折を経験し、周りが見えなくなるほど目の前だけに没頭し、人外になっていく。
今日本のサッカーには
この雰囲気が必要なのではと思ったのです。
死に物狂いできれいに勝とうとするサッカーを辞め、
冷酷に90分間相手に何もさせず相手は試合が終わったとに苛立ち続けるような「暗いサッカー」とでもいいましょうか。
ブラジル戦の前半はまさしくスタートから
前田と伊東がしつこく追いかけ
佐野が回収し、鎌田がいなす。
上田のポストに頼らせてマルキーニョスを抑え込む。
ヴィニシウスが持ったら常に2人で縦と横を切る。
ブラジルがミスった瞬間に全選手で襲いかかり、ゴールを決める
45分間、日本は間違いなくハイエナだった。



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