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本当にあと一歩だったのか——ブラジル戦の総括

#日本代表#ブラジル#WorldCup2026#戦術#前田大然#ヴィニシウス

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日本 1-2 ブラジル。先制しながら、ロスタイムに逆転を許した。

試合後、「ブラジル相手にあと一歩だった」という声をよく見た。先制して、最後まで競って、最後の最後に沈んだ。気持ちはわかる。

試合画像1

でも、私の目には違って映った。

あと一歩では、なかったと思う。後半は、あと一歩どころか、ただ押し込まれた45分だった。跳ね返しても、また来られる。ひっくり返す場面は、ほとんど無かった。スコアは惜しいが、中身は惜しくない。これが、私の総括だ。

ただ、悲観はしていない。むしろこの試合は、日本がどこへ進むべきかを、はっきり見せてくれたと思っている。

日本対ブラジル、試合を象徴する一枚

前半は100点。これは多くの人が同じことを言っている

前半の攻防

前半の45分は、文句なしだった。私だけでなく、プロの目利きの多くも「前半は良かった」と言っている。だから、ここは安心して土台にできる。

良かった中身は、はっきりしている。

前線から人が出て、ブラジルにミスをさせる。奪ったら、まっすぐゴールへ向かう。ヴィニシウスには、一人で対応せず、複数で囲んで何もさせない。個では敵わなくても、全員でやれば止められる。

前線からのプレス

この景色は、初めてではない。カタールW杯後のドイツとの再戦。あの90分は、ずっと日本が圧力をかけ続けて勝ち切った。イングランド戦も近いものがあった。あれができたチームが、ブラジル相手の前半に、もう一度あの顔を見せた。

後半、ブラジルはやり方を変えてきた

後半の展開

問題は後半だ。

ブラジルは保持をやめ、シンプルに前へ当ててきた。崩しにこだわらず、力で押し込む方向に切り替えた。

失点も、その流れだった。フリーになったマガリャンイスが上げ、ヘディングの強いカゼミロが、見慣れた形で決める。崩しも何もない、ただの力勝負だ。

失点場面

ここから日本は、悪い方へ転がる。

その攻撃が怖くて、守備ラインが前半より数メートル下がった。たったそれだけ、と思うかもしれない。でも、この数メートルが効く。

跳ね返した後のボールを拾う位置が、それだけ後ろになる。すると、そこから出すカウンターが届かない。前半はゴールが近かったのに、後半は遠い。ブラジルからすれば、刺し返される怖さが減る。だから、安心して殴り続けられる。

カゼミロのヘディング弾/マガリャンイスのクロス

カゼミロが最前線まで上がってこられたのも、この「下がり」のせいだと思う。前半のように前から行けていれば、そもそも彼があの位置にいなかったかもしれない。失点は、力で殴られたというより、引いてしまった結果だ。

実力差のある相手に45分も押し込まれれば、どこかで穴は空く。よくある話だ。そして残念ながら、その流れを断ち切る力は、このメンバーには残っていなかった。

覆せなかったのは、地力と層の差

地力と層の差

今回は、主力が軒並みいなかった。三笘、南野、久保、堂安。彼らが揃っていれば、後半も同じ圧力でいけたんじゃないか。その思いが、どうしても消えない。

今のメンバーには、スピードかパワーで局面を一発でこじ開ける選手がいなかった。途中から入った町野、鈴木唯人、塩貝が悪いわけじゃない。ただ、彼らは一発で違いを作るより、連携で違いを作るタイプだ。そして、ラインが低い状況では、その連携カウンターが一番出しにくい。

おまけに、前田大然、伊東純也、中村敬斗、堂安は、前半からずっと走っている。終盤に押し返す脚は、もう残っていなかった。

個の差と、控えの差。この試合は、それがそのまま出た。「あと一歩」ではなく、地力で押し切られた。

改善点はひとつ。あの45分を、90分にできるか

負けたあと、SNSではいろんな声が飛ぶ。「個の力を上げるしかない」「育成を変えるしかない」。どれも正しいのかもしれないが、漠然としすぎていて、私はあまり乗れない。

前半が100点なのは、もう分かっている。だったら、問いはひとつでいい。

あの前半を、90分続けるには、どうするか。

これに絞れば、話はずっと分かりやすくなる。

その視点で今回の課題をひとつ挙げるなら、後半に「守ろう」という意思を強めすぎたことだ。

両ワイドを抑え、サイドバックからの球も警戒して、中盤のラインが押し下げられた。前から行けないからプレスがハマらない。ハマらないからブラジルはミスをしなくなる。ミスが減れば、楽にボールを回される。そうしてヴィニシウスにボールが入り、後半から出たマルティネリが仕掛けてくる。

守備ラインの低下

守りに入った瞬間から、この悪循環が始まっていた。

「守り切る」のではなく、「勝つために守る」

ここで思い出すのが、イタリアだ。

イタリアは守備の国と言われる。でも彼らは、引いて守り切るチームではない。点を取るために守っているだけだ。

だから、彼らのラインは下がらない。守る時間は長くても、ラインはむしろ前へ出ていく。圧力を上げて、上げて、「何をやっても跳ね返される、もう手がない」と相手に思わせる。その瞬間に誰かが刈り取り、一気にカウンターが発動する。

日本の後半は、これの逆だった。「いったん守り切って、それから取りに行く」。だからラインが下がる。

目指すべきは「勝つために守る」だ。守職に比重を置いても、ラインは下げない。むしろ圧力を強める。守って、守って、相手が苦し紛れになったところを刈り取って、そこから刺す。同じ「守備的」でも、向きが正反対だ。

前線から刈る。これが日本の良い形だと思う

世界の3トップと言えば、ふつうはエース級の点取り屋を思い浮かべる。

日本に、そういう刈り取り役を前に並べる伝統があるわけではない。でも、今回のように前田大然や伊東純也がいて、昔で言えば岡崎慎司がいた。前線からしつこく守備をして、相手にミスをさせて、そこを奪う。これこそ日本の良さなんじゃないか、と私は思っている。

ブラジル戦の前半は、まさにそれがハマった時間だった。

前田大然がブラジルのCBにプレスをかける場面

その鍵は、前線のスピードだ。足の速い選手が最前線から走り続けると、相手のセンターバックは落ち着いて持てなくなる。かつての浅野拓磨がいい例だ。彼自身がボールを刈るわけじゃない。ただ、あの速さで前から走られるだけで、相手は嫌がってミスをする。そのミスを、後ろの全員で拾う。

だから私は、前線には連携型や一発型より、走れるスピードのある選手を置きたい。

日本のサッカーは、ミドルブロックの、ミドルカウンター

日本が目指す形は、引いて引いて守り切って、ロングボール一本で、足が速くて体も強いヴィニシウスみたいな怪物が一人で完結する——そういうサッカーではない。それはブラジルのもので、日本のものではない。

ミドルブロックの形成

私のイメージは、もう少し前だ。

中盤のゾーンで構える。ラインは、ほんの少し高めに保つ。そして相手がミスをした瞬間、その高さを使って、全員でドッと前に出る。奪った一人が独走するんじゃない。周りから次々と人が流れ込んでくる。だから相手が孤立する。

ヴィニシウスが分かりやすい。彼がボールを持った瞬間、周りの守備が揃っていれば、世界最高のドリブラーでも一人になる。寄せられて、潰されて、奪われる。奪った時には、もうこっちの攻撃が始まっている。

極端な話、ボール保持率は1対9でいい。持たせて、ミスをさせて、奪う。日本がボールを持つのは、奪ったその一瞬だけ。素早く繋いで、素早く仕留めて、相手がやり直したら、また奪いに行く。

もっと言えば——GKを除く10人のうち、9人が遠藤航や佐野海舟のような回収役で、最後の10番だけが、その重く黒い試合を、一人で美しく仕留める。そんなチームになったら、最高だと思う。

柴犬が、ハイエナになるとき

ブラジルやモロッコは、ライオンだ。一人ひとりが大きく、強く、個で完結する。

一方の日本は、優しくて、温厚に見える。みんな柴犬みたいだ。人懐っこくて、きれいなサッカーをしようとする。

その柴犬が、ハイエナにならないといけない。

ハイエナは、一匹なら小さい。でも群れれば、ライオンもチーターも退かせる。冷酷に、90分、相手に何もさせない。じりじり追い詰めて、ミスを誘って、群れで仕留める。日本に一番似合うのは、この戦い方だと思う。

ふと思う。日本の漫画が世界で愛される一番の理由は、主人公が必ず一度、闇に堕ちるからじゃないか。ワンピースも、ハンターハンターも、進撃の巨人も、ヒロアカも。キラキラした主人公が、どこかで一度、目をバキバキにして、周りが見えなくなるほど目の前だけに没頭する。あの時期を通らないと、人外の領域には届かない。

今の日本代表に足りないのも、たぶんそれだ。

きれいに勝とうとする柴犬の自分を、一度脱ぐ。9人が世界を黒く塗りつぶし、最後の一人が、その黒を美しさに変える。

前半と同じ圧力を、ただ90分。柴犬がハイエナになった時、ブラジルに見せたあの前半が、ようやく90分になる。

その時に初めて、「あと一歩」という言葉が、嘘じゃなくなる。

ハイエナモデルの帰結

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